台湾TSMCの半導体環境

どうもりゅのんです。今回は半導体ファシリティの最大手TSMCも含めた半導体周り全体について調査し、状況と今後の展望などをメモ的に書きました。

半導体ファウンダリー

TSMCのようなファウンダリーはシリコンウェハーを仕入れて半導体デバイスを作成する工程を担う産業。

信越化学工業などの世界的なシェアを持つ会社からシリコンウェハーなどの原料供給を受け、そこに回路を生成して半導体デバイスとする。ファウンダリーが担うのは全体のデバイス製造工程。

1990年代は自前で半導体デバイスまで仕上げる企業が多かったが、プロセスルールが微細化するにつれて巨額の設備投資が必要になった。そのため各社は設計だけして製造はファウンダリに委ねるという分業へと変える動きに変わっている。

いわゆる日の丸半導体はこの水平分業化の動きについていけなかったため没落した。

半導体ファウンダリのシェア

rank企業シェア最新プロセス備考
1TSMC台湾56%5nm3nmプロセスを2022/4より生産予定
2Sumsung韓国18%5nm3nmプロセスを2023年より生産予定
3UMC台湾7%14nm先端プロセスは導入予定なし
4GlobalFoundriesUSA7%10nm7nmプロセスは無期限延期
5SMIC中国5%14nmファーウェイへのチップ製造を停止。自身も米国エンティティリストに記載される。
6TowerSemicondoctorイギリス2%15nm
7PSMC台湾2%25nm25-55nmプロセスを増強予定

上表のようにTSMCは世界最大の半導体ファウンダリー。市場シェアは断トツ1位の56%。二位はサムスンでシェアは18%。三位以下は一桁%のシェアとなっていてTSMCが一強といえる。

最新プロセスである5nmひいては3nmへのプロセス微細化はTSMC, Samsungが目指して設備投資をしている。3位以下のファウンダリはレガシープロセスの設備投資を目指す形で動いている。

最新プロセスを突き進む上位2社と既存のプロセスを強化することで収益化を目論む3位以下の会社と二極化した体制が見えた。これは設備投資費用と半導体需要、半導体を巡る米中の対立が複雑に絡み合っている。

最新プロセスの設備投資費用

一桁nmの最新プロセスには多額の費用が掛かる。TSMCは2021年度の設備投資額を300億ドルとしており、8割にあたる240億ドルは最新プロセス設備に利用される模様。またCEOである魏哲家が今後3年間で計1000億ドルを投じると発表している。

240億ドルという金額は売上が6兆円ほどあるTSMCでも厳しい数字。この規模の投資を実施しているのは現状でTSMC, Samsung, Intelの三社のみ。

半導体デバイスの需要

プロセス(nm)用途半導体製品
150パワー半導体パワー・アナログ
90アナログLSIパワー・アナログ
60イメージセンサ・メモリ・一部MCUメモリ・ロジック
28MCU(スマホSoC, CPUなど)ロジック
14MCU(スマホSoC, CPUなど)ロジック
5MCU(スマホSoC, CPUなど)ロジック

TSMCが主に投資を行う最新プロセスはMCU用。3nmプロセスではアップル(A16?チップ向け)やインテル(Intel3チップ)が生産委託の契約を交わしており、2022年から量産が開始される予定。

この二社でほぼ生産ラインが埋まる予定で、他社に最新プロセスの主導権を握らせないという狙いもありそう。

AMDなど他社としてはSamsungを利用するという選択もあるが、アメリカがレアメタルの中国独占に憂慮してTSMCに米国内での生産工場を誘致したことや単純にSamsungの製造技術がTSMCに若干劣っているという点が尻込みする理由になっている。

半導体用途別の住み分け

TSMCとSamsungがロジック半導体に舵をきるなかで、3位以下のファウンダリはパワー・アナログ・メモリのシェアを狙う。

パワー半導体は様々な産業機械に対して個々に設計する必要があり、少量多品種生産がメインです。市場規模として200億ドル以上あり、IoTが普及していくなかで規模は膨らんでいく予想。

周波数を変換したり、インバーターの役割を担ったりと役割は単純。しかしその分電気抵抗でエネルギー損失を抑えたり、効率的なスイッチングを行ったりとパワー半導体ならではの技術が必要になる。

日本のロジック半導体は壊滅的

最新の一桁台のプロセスルールは製造装置を整えるだけで兆円規模の莫大な投資が必要。

そのせいもあって日本ではロジック半導体向けの一桁台プロセスルールの製造は実施されていない。というか日本の最新技術は32nmとかで止まっているので、現行の最先端から何世代も置いてけぼり。垂直統合型の半導体から水平分離型のファウンダリに移行するという動きに日本は蚊帳の外だったのだ。

今や半分は海外資本になってしまったキオクシアがNANDメモリ向けに15nmを主力として展開している以外、日本企業で先端に近いプロセスルールを製造しているものはない。海外企業だとマイクロンが15nmを日本国内で製造している。

日本企業では車載マイコンでルネサス、CMOSイメージセンサでソニーがそれぞれシェア1位を獲得している。それらはプロセスルールとしては主にミドルレンジの20-40nmを利用している。車載用半導体はルネサス一強なので半導体不足解消へ頑張ってほしい。

日本のパワー半導体

パワー半導体分野では三菱電機や富士エレクトロニクスなどが世界と辛うじて戦えている。一位のインフィニオン26%に対し、三菱電機率いる日本勢は一桁代のシェアになっている。

三菱電機は産業機器、鉄道車両、エレベーターなど向けに機器そのものとパッケージして販売している。富士電機は自動車向けの自動運転ソリューションやLiDAR(光による測量と検知システム)を得意としている。

両者ともにパワー半導体を成長分野と位置付けており、次世代材料であるSiCを利用して電力損失が少なく放熱性も高いパワーデバイスの販売をしている。

パワー半導体次世代の主役はSiC、用途によってGaN

先に述べたSiCに加えてGaNがすでに実用化されている。GaNの方がSiCの3倍ほど性能指数が高く優れているのですが、Gaはレアアースのため値段が高くシリコンのように基盤として利用すると高価となる。

そのためGaNはシリコンウエハ上に薄膜を作成することで利用しており、スイッチング速度が高く電力損失が少ないというメリットはあるが大電流化をするのが難しい。

そこで大容量の電力が掛かる大型機器ではなく、スマホのSoCのような動作スイッチング周波数が高くて低用量電力の機械への利用が最適だと思われており、採用が次々に進んでいる。

さらに次世代はGa2O3が牽引か

4インチエピウエハでの研究でノベルクリスタルテクノロジーやFLOSFIAといったベンチャーの日本企業が先行している。関連銘柄は前者と共同開発しているタムラ製作所、および後者に出資しているフジミインコーポレーテッド・デンソーとなっている。

サファイアウエハ上にGa2O3層をエピタキシャル成長させることで成膜して作成。ショットキーバリアダイオードを作成しての実験ではSiCと比べてオン抵抗が7分の1程度になっており、エネルギー損失を大きく軽減できるのでパワー半導体デバイスとしての活躍を期待している。

3位以下の半導体ファウンダリの動き

25-55nmは Tower Semiconductorなどが投資を強化すると発表していて、 投資額としても最新プロセスの設備導入費用の20%程度で抑えられ、かつ旺盛な需要が見込まれる。

また中国最大手のSMICはロジックが14nmでストップしており、その他ファウンダリーと同様の戦略を取っている。米国の軍事的戦略も絡んだ半導体供給停止令によって、ファーウェイはTSMCに発注していたSoC「kirin」の基幹部品を急遽SMICへの発注に切り替えた。

残念ながら7nmプロセスで作成していたkirinは14nmプロセスにせざるを得なくなる。それだけでなく後工程や素材供給などは英国や米国、日本など様々な企業の先端設備や材料を必要とするため、中国だけの自前で競争力のある製品を作れるとは思えない。

不動産バブルの政府介入による抑制や性的もしくは暴力的なコンテンツの禁止を筆頭に中国では様々な産業を規制する動きが活発化している。中国企業は国内の規制に加えて、米国とその方針に習う国々からの二重の包囲網なので結構苦しい。

米中間の半導体への動き

中国と米国ではハイテク産業についても睨み合いが続いている。中国の安価なレアメタルを世界中にバラまかれていたため、それらの輸入国である殆どの先進国でレアメタル関連の産業が育っていない。

いまや自動車も兵器も、ハイテク機器の何を作るにもレアメタルが必要。つまりレアメタルを握っている中国は全世界のハイテク関連産業の生殺与奪権を握っているといえる。

米国では対抗すべく技術や材料供給を封じるなど両国でハイテク産業を巡ったせめぎ合いを繰り広げています。半導体製造装置や検査装置はアメリカや日本、欧州の企業が寡占的なモノも多く、中国企業単体で賄うのはままならない状態です。

こうして中国はレアアースを、米国は半導体技術を人質にとって互いにけん制しているのが現状。流行りのEVもモーター各種を製造するのにレアメタルが必要なのでNIOやXpengなど握っている方は下記を見てみてもいいかもしれません

経済産業省 資源エネルギー庁

レアメタルが使われている電気自動車(EV)の普及には鉱物資源に関する課題をクリアにしていく必要があります。EVと鉱物資源…

 

半導体サイクルでまた不況に陥るのか

半導体サイクルは2-4年ほどで需要の増減が繰り返される。現在は大幅な需要増のため、大幅に設備投資して供給を高めている。

ミドルレンジプロセスである車載マイコンなどは需要増により買いだめするサプライヤーが散見される。自動車は未だに半導体不足で生産をストップしている車種が多いため、今後は生産台数が伸びていくだろう。

しかし半導体は大幅に供給過多になって価格が下落し、1-2年後には製造装置やファウンダリーの利益も減少すると考える。現行の需給からして半導体不足はむこう半年ほどは継続するとファウンダリー各社は見ているし、私もそのイメージかと思う。

2021年10月現在、第5世代通信(5G)の普及やデータセンターなど向けの先端半導体需要が増加しており、ファウンダリのキャパが圧迫されている状態。それぞれ重点分野に資金を投下して生産能力の強化を発表している。

TSMCの日本進出

5月31日にTSMCが茨城県つくば市の産業技術総合研究所のクリーンルームに検証ラインを設置し、高性能の演算処理半導体に求められる3次元実装技術の研究開発に取り組むことを示した。日本は5年間で190億円を 半導体製造の「後工程」の研究開発向けに支援する予定。

TSMCからの指名されて参加予定となっているパートナー企業には、新光電気工業イビデン富士フイルム三井化学旭化成JSR日東電工などの材料メーカー、芝浦メカトロニクスやディスコ、島津製作所などの装置メーカー。

ムーアの法則が達成困難なプロセスルールに近づいてきたため、最近では半導体の微細化ではなく多層化による性能向上が重要視された。後工程での「3次元実装」の技術向上が今後の半導体性能向上のカギになる。

3次元実装に欠かせないパッケージング技術は外部とチップに金属配線を施し、衝撃でズレたりしないように封止材で包んで保護する工程。小さなチップを精緻に積み上げるのは難易度が高いため、技術に富んだ関連の日本メーカーたちが集められた。

日本では後工程のみ工場建設

日本に建設されるのは10-20nmプロセスの後工程工場のみ。これまで見てきたとおり、日本国内はCMOSセンサやパワー半導体がメインであって、ロジカル半導体向けの最新の数nmプロセスは需要がないので当然だ。

報道されている熊本工場はSony工場の横に立てるTSMC・Sonyの合弁工場になる模様。Sonyで製造した前工程品を利用して新工場にて後工程を実施するような形だと思っている。

研究開発段階から日本企業が噛みこむことで最先端のTSMCからの将来的な大規模発注が見込めてうまみはありそう。

全工程の工場を作らない理由

研究開発を日本でやるのはサプライヤー面から好都合だが全工程を担う工場を作るのは厳しいと思う。

第一に日本にはファウンドリの需要がない。半導体ファブレスが殆ど存在していないため、ファウンドリとの技術擦り合わせが上手く出来る企業が殆どない。キオクシア・Sony・総合電機など国内勢はみな垂直統合型であるため、急に水平分業型にしようとしてもできないのが現状。

第二に台湾に比べて維持費・人件費面での費用がかさむ。日本は台湾に比べて人件費2倍であり、電力や超純水の値段もとても高い。利益面はメリットはないが後工程で最先端をいく研究が出来る。

ちなみにアメリカに建設を進めている5nmプロセスが製造できる工場は、人件費が3倍であり、建設費も6倍。さらに法規が台湾や日本と異なるせいで設備を既存工場と同じレイアウトに出来ないという問題まで抱えている。

日本とアメリカに工場を建てる意味

利益と逆行してまで二国に工場を建てるのは政治的な意義がある。中国が台湾に呑み込まれると台湾工場から他国へ半導体供給が出来なくなる可能性が高い。またTSMCとしても他国へ販売できなくなるのは必ず避けたい。そこで日本・アメリカに工場を逃がしておいた。

世界の半導体シェアの半分以上を握るTSMCが中国に寡占されたとなれば、軍事・情報通信のあらゆる面で他国は大劣勢になってしまう。 そこで規制を強めて中国に対立するアメリカにもゴマを擦っておき、国際的な立場として中立を守りたいという思想も大きい。

アメリカとしても軍備に必須な半導体を国内で調達できれば安心だ。ただ半導体製造で必須なレアメタルのシェアの6割を中国に握られているのはなかなか痛い。

日米印豪は協力してレアメタルを安価に調達する術を模索している。短期的には安価安定供給できる方法を探しつつ、長期的には下段のようなレアメタルフリーな部材を増やしていく方向になるだろう

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